奥田英朗 サウス・バウンド(2005) ★★★★★

奥田英朗の長編小説です。奥田本は全て買っており,この本もハードカバーを持っていたのですが,この本だけ借りパクされてしまい,現在手元にありません。また,これも映画化されたようですが,見ていません。

元過激派の父を持つ小学生の視点で書かれた直木賞作家・奥田英朗の長編小説です。

第一部・東京編では変人を通り越して異常者にしか見えない父親ですが,第二部・沖縄編ではその筋を通し続ける姿がものすごくカッコよく見えます。「おまえはおとうさんを見習わなくていい。おまえの考えで生きていけばいい。おとうさんの中にはな,自分でもどうしようもない腹の虫がいるんだ。それに従わないと,自分が自分じゃなくなる。要するに馬鹿なんだ」第一部を読んでた時はどうしようもないダメ親父にしか見えない彼がこんなセリフを言うなんて,誰が信じられたでしょうか?とにかく破天荒な父親に振り回され続ける小学生の笑いあり涙ありの爽快青春物語です。もちろん父親だけでなく,母親,姉,ナゾの外人ベニーやマジメな公僕新垣巡査など,登場人物全てが描き込まれていてとても魅力的です。父親の周りの人間はすべて,彼に影響され変わっていきます。そこらへんの変化も読んでみてください。これを読んだ人はおそらく国を捨てて沖縄での自給自足生活も悪くないと思うに違いありません。

第一部が小学生のクセにちょっと大人すぎない?とか第一部そんなに長くても意味ないからもう少し短くして第二部をもっと長めに書いて欲しかったとか不満点もあるにはありましたが,それ以上に満足感の方が断然大きいです。当時読んだのはハードカバーだったので,文庫版ではそのへんは改善されてないでしょうか?読んでいないので分かりませんが…。とりあえず自信を持ってオススメできる作品です。


サウスバウンド (講談社文庫)

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