東野圭吾 赤い指(2006) ★★★

東野圭吾の加賀恭一郎シリーズの1つです。このシリーズは現在9作ほど出版されていますが,私はこの「赤い指」が一番最初に読んだ作品となりました。ドラマ版も見ましたが,原作よりももう少しマイルドにしてある感じがしました。
嫁姑の確執,夫の浮気,親の介護,子供の引きこもり…。様々な問題を抱えた家族でさらに起きてしまった犯罪。今まで父親が避けてきた問題が,積もりに積もって一気に降りかかってきてしまった。これらの問題をどうやって解決すればいいのか,ひたすら悩む非常に暗い話です。

とにかくこの話は登場人物がとにかくクズで,全然感情移入できませんでした。暴走するバカ息子を異常すぎる愛でかばう母親,そして彼らを制御できない一家の大黒柱の父親。なぜそこでそうしてしまうのか?そうなってしまうのか?とイライラしながら読みました。結末も,やっぱそうなるんだろうなと読めてしまって,結局その通りで,ガッカリでした。

ただ,1つだけ読めなかったのが,ラストの加賀刑事とその父との関係です。ここだけ意外で,ひたすら重い話が少し晴れました。しかし,この加賀刑事シリーズを知ってたら,もっと面白いんだろうな,と当時は思いました。これを読んだ当時,加賀恭一郎シリーズを私は読んでないのであまり分からず,今度探して読んでみよう,と思ったのでした。しかし,加賀恭一郎シリーズを全作読んだ今だから分かりましたが,赤い指以前の作品では加賀刑事の父親は登場しません。父親が刑事だったよくらいの情報のみです。

また,もう1つこのシリーズを全部読んでみて分かった事ですが,犯人がどうだとかでなく,このシリーズの読み方は,犯罪者がどうというよりも,主人公である加賀恭一郎がどのように真相に近付いていくのか,どのように犯人を改心させていくのか,どのように心や人生にダメージを受けた被害者遺族や事件関係者をうまく修復していくのか,そういった観点で読んだ方がよいと思います。加賀刑事は優秀なのはもちろん,「刑事はただ事件を解決させればよいというものではない」というポリシーを持った,非常に人間味にあふれる優しい刑事だからです。

加賀刑事がそのようなポリシーを持つに至った過去もいろいろあるのですが,それについては他の作品で少しずつ触れられているので,このシリーズも1つだけでなく複数読んでみる事をオススメします。


赤い指 (講談社文庫)

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