東野圭吾 手紙(2003) ★★★★

犯罪被害者の視点で書かれた「さまよう刃」とは全く逆で,強盗殺人を犯した兄を持つ主人公が様々な差別に虐げられる,犯罪加害者の視点で書かれた話です。180度観点が違う話を同じ作者が書いている事に,ビックリさせられた作品です。

とにかく主人公が差別に悩まされ続けます。夢を諦め,好きな人を失い,職を失い…。とにかく人生の要所で犯罪者の兄の存在に足を引っ張られ,叩かれ続けます。なぜ直接自分が犯罪を犯した訳ではないのに,直接自分とは関係がないのにここまで差別されなければならないのか,と考えさせられましたが,実際私がそういう人がそばにいたらやっぱりこういう差別的な扱いをしてしまうんだろうなあと思いました。作中に「差別はあって当たり前」との言葉もでてきますが,やっぱり誰しも自分のそばに少しでも危険因子は近づけたくないのは間違いないでしょう。

最近はといえば,被害者遺族救済の声ばかり叫ばれていて,こういう加害者の関係者からの観点は完全に抜け落ちてると思います。私もこの本に出会うまで,どちらかといえば犯罪者なんてどんどん死刑にすればいいのに,くらいの極端な考え方で,加害者の関係者の観点など全くありませんでした。とても重くて深いテーマの作品ですが,ぜひ読んでよく考えるきっかけにして欲しい作品です。


手紙 (文春文庫)

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