海堂尊 医学のたまご(2008) ★★★

ごく平凡な中学生がとあるきっかけから,大学の医学部で研究を始め,とある事件に巻き込まれていく,論文捏造事件の闇を描いた作品です。いつもの海堂作品通り,舞台は桜宮市。当然他の海堂作品ともリンクしています。ただし,この作品はこれまでの作品よりもずっと先の未来,2020年の桜宮市が舞台です。この作品よりも出版されたのは後の作品になりますが,「ジーン・ワルツ」や「マドンナ・ヴェルデ」を読むと,ああ,あの子たちやあの人たちはこんな風になってるんだなあと2度楽しめます。

この作品は中高生をターゲットにしているとありますが,きちんと大人も楽しんで読めます。そのターゲットを意識してか,ルビが多めに振ってあり,しかも横書きです。しかし横書きの本というのがこんなに読みづらいとは思いませんでした。やっぱりこういうケータイ小説みたいな書き方じゃないと今のゆとり中高生には手にとってもらえないのでしょうか。そういえば忍空だか何だかっていうケータイ小説みたいに一人称で書かれてるしなあって当時は思いました。もう今ではとっくに忘れ去られちゃってますね,何とか空。もちろんあんな中学生が作った日記か何かみたいなしょうもない駄文ではありませんのでご安心ください。ただし,エンジンがかかるまでが長いのはいつもの海堂作品と同じなので,がんばって中盤までは読み進めてください。

しかしどこの組織にでも藤田教授みたいなのはいますね。部下の手柄はすべて自分の手柄,部下の失敗の責任はもちろん自分の失敗の責任まで部下に押し付け。まさに「悪意と無能は区別がつかないし,つける必要もない」だと思う。他にも含蓄のある言葉が結構あって,自分も主人公のように心に響いた言葉はノートに書きとめておこうかしら,とも思いました。


医学のたまご (ミステリーYA!)
海堂 尊 ヨシタケシンスケ

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理論社 2008-01-17
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