東野圭吾 流星の絆(2008) ★★★★★

両親を惨殺され,仇討ちを流星に誓った3兄弟の話です。事件後,捜査はなかなか進展せず,14年が経過。時効間近となり,とうとう3兄弟は真犯人と思しき人物に遭遇します。3兄弟が仕掛けた復讐計画には,思わぬ誤算が…。

これを読んだ当時は,「容疑者Xの献身」以降の東野作品では文句なしに一番良かったと思った作品です。兄弟の絆,親子の絆,タイトルにもある「絆」の話ですが,東野作品は読みやすく作品に引き込まれやすいので,どんどんページを進めたくてたまらなくなります。

ラストは都合良すぎ!とか好みが分かれるかもしれませんが,これはこれでスッキリしていて良いと思いました。「容疑者X」以降の東野作品では初の文句なしの5つ星です。

ちなみに,ここからは原作とは関係ないドラマの話です。以前やっていたTBSのドラマは,特に前評判を聞いていたからとかキャスティングを見て見る気が失せたとかではなく,特に理由も何もなく見ていなかったのですが(というかキャスティングも何も知りませんでした),ちょうど今再放送をやっているので録画で初めて見てみました。これはちょっと酷すぎですね。5話でギブアップしました。もしかしたらドラマは原作と違うラストが待っていたのかもしれませんが,そこまで行く気力が起きませんでした。

まず,全体的に無意味なコメディーの挟み込みは何なのか?非常に違和感がありました。この作品は完全シリアスで通すべきだと私は思いました。このあまりにもアンマッチなコメディータッチに各人物のバックグラウンドの影や深みが完全に飛んでいるように思いました。

そして,とりあえず人気のある人・視聴率取れそうな人集めてみました的なキャスティング。原作を一度でも読んだ人であれば,まず主人公の有明三兄弟全員イメージ違いすぎでしょう。ジャニーズで構成しないといけない理由があるのでしょうか。上から何か圧力がかかっているのでしょうか。100歩譲って次男・泰輔役の錦戸亮は良しとしましょう。あの兄貴頼りで何も考えてなさそうなところが3人の中では一番違和感がなくマシに思いました。それでも,演技・変装の達人的なイメージがもうちょっと欲しかったところですが。原作からは,一度その役になりきればそれ以外の何者にも見えない演技力が次男の泰輔にはあったように思います。

そして妹の静菜。戸田恵梨香は別に嫌いって訳ではないのですが,あまりにも品がなさすぎではないでしょうか。私にはこのドラマの静菜は非常に柄の悪いただのわがまま娘のように映りました。もうちょっと男を手玉に取り別人になりきる演技力と,事件で受けた心の傷からなかなか立ち直れない繊細さ・ピュアさの二面性が,このドラマの戸田恵梨香からは全く欠けていたように思います。以前に騙した男と鉢合わせしたりする場面がドラマにはありましたが,誰がどう見ても戸田恵梨香で,いやアンタ(前に静菜に騙された人)絶対あの女だって気付くだろ!と突っ込まずにはいられません。

そして,長男・功一役に二宮和也というキャスティングは一体何なのか。原作を一度でも読んだ人であれば,功一は非常に思慮深く頭の回転が速い知性派で,常に冷静沈着。兄弟を纏め上げるリーダーシップと有無を言わせぬ説得力を静かに発揮する。過去の事件で受けた心の傷から,どこか影がある深みのある人物…そんなイメージでしょうか。そしてそれが嵐の二宮君の演技力でカバーできたのか…私には到底そのようには思えませんでした。あまりにも知性・影・深み全て足りないようにしか見えませんでした。演技力の不足をカバーする脚本になっていればまだ良かったのですが,先ほど書いたようにちょいちょいコメディーや空気の読めない笑いを入れてくるので,薄っぺらさがさらにアップしてしまっています。

他にも戸神行成に要潤もどうなのか。後半見ていないので分かりませんが,なぜ序盤酒を飲んでくだを巻いたり絡んだりしてくる場面が必要なのか。戸神行成は店の経営にしか興味がないマジメ一辺倒の人間ではないのか。他にも書き出すとキリがないのでもうやめますが…。

とにかくイメージの違いすぎるキャスティングと空気の読めない寒いコメディータッチの脚本に我慢ができず5話までしか見る事ができませんでした。キャスティングについてはスポンサーや事務所の縛りがあってこうせざるを得なかった!みたいなところがあればそれは気の毒だとは思いますが,もしそうだとしてもそれをカバーするのが脚本や監督の仕事ではないでしょうか。それなのに,本の寒さから逆にキャスティングのアンマッチさを際立たせてしまっている。私は何もかも原作通りでなきゃダメだ!原作から1ミリも乖離させるんじゃない!という原作至上主義では全くなく,むしろ原作レイプでも何でも面白ければOKという人間です。例えばドラマのバチスタシリーズなんて,伊藤淳史の田口先生はまるでイメージも違えばストーリーも原作を破壊しまくっています。しかしアレはアレで面白いから全くOKだと思います。しかし,この「流星の絆」は酷い。面白くないし,見るに耐えない。それが私の結論です。

クドカンは100回原作を読み直して来い,というのが私の一言感想です。ああ,原作のレビューじゃなく完全にドラマのレビューになってしまいました。


流星の絆 (講談社文庫)

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