奥田英朗 純平、考え直せ(2011) ★★★★

タイトル通り,21歳のチンピラ主人公,坂本純平が道を外しそうになっているところを,リアル・ネット両方の周りの人間から「考え直せ」と言われ続ける話です。

純平はヤクザの下っ端として歌舞伎町の組の1つに所属し,心酔する兄貴分・北島の下での毎日を過ごしています。社会からつまはじきにされたチンピラではあるものの,素直でお人好し,見た目もあまり怖くない事から,歌舞伎町の人間にはすごんでも怖がられず,逆にからかわれたりしてかわいがられており,その事を純平は不満に思い,早く北島のような周りから一目置かれるヤクザになりたいと考えていました。

そんな純平にある日組長から直々に鉄砲玉として敵のヤクザの命を取る命令が下ります。その組長は非常に小心で人間としての器の小ささを純平も少なからず感じてはいましたが,一刻も早く尊敬する北島のようにヤクザの世界でのし上がっていきたい純平は,即座にその命令を引き受けます。組長は明らかに純平を使い捨てとして利用する気満々ですが,頭の悪い純平はそれに気付きません。

鉄砲玉としての仕事を実行するまでの3日間,純平はある程度のお金と自由な時間を与えられ,おいしいものを食べたりいろんな人々に会うのですが,たまたま知り合ったギャルに鉄砲玉の話を話した純平は,そんな危険な事はやめるよう説得されます。もちろん純平はそんな事を聞きはしないのですが,そのギャルはインターネットの掲示板でその事を相談。「純平は利用されている」「人殺しはやめろ」という説教から,「クズども殺し合え」「ビッグになれるぞ」などという無責任に煽る声まで,いろいろな書き込みがされていきます。「純平,考え直せ」―そんなネットの書き込みや,周りの人間の声から迷い始めた純平の3日間が描かれています。

結局迷ったまま3日間が過ぎてしまい,純平は結論を出せぬまま。鉄砲玉としての仕事を果たすのか?思いとどまるのか?というところで物語が終わっており,後は読者の想像にお任せします的なラストです。人によっては消化不良的な感想を持つかもしれません。読みやすさは相変わらずなので,ちょっと時間の空いた時でもスラスラ読めます。


純平、考え直せ (光文社文庫)

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