東野圭吾 悪意(2001) ★★★★★

東野圭吾の加賀恭一郎シリーズの第4作です。人気作家が殺害され,犯人は早々に逮捕されますが,なぜ犯人が被害者を殺害したのか?が分からない。「なぜ」を解き明かす作品です。

売れっ子作家の日高邦彦が自宅で殺害されます。今回捜査一課の刑事として登場する加賀恭一郎は,事件の第一発見者であり,かつて教師時代の先輩でもあった児童小説家・の野口修が事件について書きとめた手記に興味を示します。その手記と加賀の捜査により,犯人は早々に逮捕されますが,その犯人は動機については堅く口を閉ざしていました。一体犯人はなぜ日高を殺害したのか?

この作品は,野々口修の手記と,加賀恭一郎の独白や記録とを交互に繰り返し,真相が明らかになっていくつくりとなっています。こういった系等の作品の鉄則として,「書いてある事が必ずしも真実ではない」という事があるのですが,注意していてもそれでも思いっきり騙されてしまいました。終盤で話が二転三転して,事件の様相が全く変わります。

この小説のタイトルでもあるドス黒い「悪意」。人は何の罪もない人間にここまで酷い「悪意」を向けられるものなのか。「悪意」だけでここまで執念深く周到な準備をできるものなのか。寒気が走ります。そういう訳で犯人に対しては全く共感ができない作品なのですが,この作品の仕掛けには本当に脱帽するしかありません。なぜこんな全く違う話をいくつもいくつも考えられるのか,いつもながら感心させられます。

加賀恭一郎の教師時代の苦い経験も描かれているので,ぜひ一度読んでみる事をオススメします。


悪意 (講談社文庫)

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