海堂尊 ジーン・ワルツ(2008) ★★★★

死亡時医学検索,小児科医療,救急医療等様々な医療の暗部にスポットライトを当ててきた海堂作品ですが,今回は産婦人科医療について書かれたお話です。産婦人科医が主人公。

「人は神になり得るのか?」「もはや現代医学において,誰の腹から生まれたかというのは親子である事の証明にはならなくなってしまった」「誰もが正常に子供ができて正常に子供が産めて当たり前などという事は大間違い」などなど,産婦人科医療についてのたくさんのテーマが詰め込まれ,特に現場の医療を衰退させていく政治の愚かさに対する怒りが一番に打ち出されています。いつもの海堂作品においては,こういう現場の医療に対する怒りはバックグラウンドとして匂わせる程度に収めており,個性的で強烈なキャラクターが猛スピードで話を展開していくエンタメ色が強い作品だったのですが,この「ジーン・ワルツ」では社会性の強いテーマを打ち出す事を重点に置かれているように感じられました。悪く言えば他の作品よりもかなり説教臭く感じられるかもしれません。ためになるのは間違いありませんが。


ジーン・ワルツ (新潮文庫)

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