海堂尊 ナイチンゲールの沈黙(2006) ★★

既に何度もドラマ化・映画化されている海堂尊のバチスタシリーズの第2作です。これまでは絶賛してばっかのものばかり選んでいたので,初めてのしょんぼりな出来の作品のレビューです。

序盤は小児科の人間関係が書かれてて,人間ドラマなのかな?って感じで読んでいると,取ってつけたような殺人事件が発生して,あれ?これってミステ リー?ってか倒叙式でもないのに犯人明らかだし,話やトリックも読めるし,ミステリーでもないよな…。と思ったら途中からファンタジーに??一体何がした いの???って感じでドラマとしてもファンタジーとしてもミステリーとしても全てにおいて中途半端で全然面白くありません。これって前作みたいに医療が関わってくる意味があるのでしょうか?フツウにたまたま田口と白鳥が偶然どっかで遭遇した事件を「バチスタ」の時みたいなドタバタの掛け合いで解決に導く,とかでいいのでは?といろいろな疑問がわいてきます。

また,海堂尊の最大の武器であるキャラクターが前作と違って全然面白くありません。いや,面白そうな人たちなのですが,誰も彼も特に見せ場もなく話が終わってしまいます…。主人公たちも,本当に前作と同じ田口なのか?白鳥なのか?キャラクターの味がぜんぜん出ていません。

また,前作と同じく非常に前半が冗長で,読み始めてからノッてくるまでに非常に苦労します。かといって前作のような盛り上がりもなく,読むとかなり疲れます。文庫本だと修正されているのかどうか読んでいないので分かりませんが,そもそもの素材がイマイチなのでいくら改変したところでそう大して変わるとは思えませんが…。

そういう訳で,レビューを書いておいて何ですが,あまりオススメできるような本ではありません。極度の海堂尊マンセーの人なら止めませんが…。海堂尊作品は過去の登場人物がちょいちょい他の作品にも出てくるし,この「ナイチンゲールの沈黙」に登場したキャラクターも後の作品に出てくる事もあるので,その登場人物の背景を知っておきたい,という意味で読んでおくというのもアリだとは思いますが…。別に背景を知らなくてもその作品は十分楽しめるし,理解もできますしね。

前作「チーム・バチスタの栄光」がかなり面白くて期待して買っただけにガッカリもかなり大きかった作品です。続編に期待します。


新装版 ナイチンゲールの沈黙 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

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