今年に入って日記をサボっていたおかげで本のレビューの方も全く進んでいなかったのでこちらも進めます。去年中にmixiに上げた分のレビューだけは終わりたかったのですが,まだ半分も終わっていません…。今年はもうちょっとペースを上げて早く終わらせて,早く昔の本じゃなくて最近の本のレビューを書きたいのですが…。今回はまた医療関係の本です。一時期意図せず現役の医者が書いた小説ばかり読んでいたのですが,これもその1つです。
「白い巨塔」とサスペンスを足したような,医療過誤,高齢化社会,果たして世の中これからどうなって行くのか?作者が世の中に訴えてるんだろうなって感じの話です。
「チーム・バチスタの栄光」も現役の医者が書いた本でしたが,この「破裂」も現役の医者が書いたもの。しかし,エンターテイメント風味な「バチスタ」とは全く方向性が違い,この「破裂」は完全にリアリズム追求,人物描写も医療の現場も裁判の風景も高齢化社会も一切の理想や妥協とかいったものを排除したシリアステイストとなっています。
この本の中にいい人や何でも解決してくれるヒーローのような人は登場しません。全ての人がいろんな葛藤と戦い,迷い悩み続け,ミスをしたり間違った方向に行く事もあります。一応全ての人間は報いを受ける,みたいな感じになってはいますが,誰も救われません。登場人物一人一人に残酷な報いが与えられ,読んでると非常に暗い気分になる作品です。ストーリーもとにかくひたすら黒い話,暗い話が続いて読むのを止める人もいるかもしれません。
でも私はそういう救いのない話もそれほど苦にはしないので非常に興味深く読む事ができました。読み応えもばっちりありました。この作品で何か気に入らない所を探すとすれば,物語終盤まで,この陰謀に次ぐ陰謀の中,どうやってこの悪を倒すのかととても楽しみに読んでいたのですが,意外とあっけない幕切れだったのが残念といえば残念でした。
とてもいろいろ考えさせられる作品なので,これから来る高齢化社会を迎えるにあたり,ぜひ一読して欲しいと思います。といっても別に小難しい専門書ではなくただの小説なので,あまり構えず読めますし,そう読んで欲しいですね。