アダム・ファウアー 数学的にありえない(2006) ★★★★

これも相当昔に読んだ本です。昔過ぎてもうほとんど内容を覚えていないのですが…。最近知ったのですが,これの続編も出ているらしいので,今度機会があれば読んでみようと思います。

「マイクル・クライトン系のノンストップサスペンス」「ダヴィンチ・コード系」という形容がしっくり来るらしい作品です。これを読む時点では,ダ・ヴィンチ・コードは読んでいなかったのですが,その当時はダ・ヴィンチ・コードが読みたくて,本屋に買いに行ったらダ・ヴィンチ・コードが売ってなかったのでたまたま目に付いて買った本です。ダ・ヴィンチ・コードの書評はまた改めて載せます。

本の帯には,「ガチガチの文系で,数学は落第寸前だったけどものすごい勢いで楽しめたから大丈夫」なんて書いてありましたが,正直絶対ムリだと私は思いました。本当にガチガチの文系の人はまず,この上巻はかなり読むのがツラくて止めてしまうと思います。まず,最初の方から確率の講義みたいな話が長々と書いてあり,数学アレルギーの人はたぶんこれで挫折してしまうと思います。あるいは,この「数学的にありえない」なんていうタイトルからして敬遠してしまって最初から買わないのではないかと思います。とにかく,高校数学レベルの確率くらいは分かっていないとキツイです。それくらいは分かってれば,一応説明は丁寧だから分かったつもりにはなれると思います。しかしツライ事には変わりません。上巻終盤では,大学レベルの確率論・統計理論を,下巻序盤では,量子力学の基礎くらいを,理工系の大学でそれぞれかじってると,何言ってるのかも分かるし,とても面白いとは思います。そういった理数系の話が分からなくても別に読めない事はないでしょうけど,面白さが半減するし,読むのがとてもツライと思います。一応理系の端くれである私でも上巻の前半は読むのが非常にツライ作品でした。

そして,数学の話に加えて読むのがツライであろう理由の2つ目が,ストーリーです。数学の天才だったが,今はただのギャンブル中毒である主人公のケイン,CIAの女暗殺者ナヴァ,大学院生の愛人を使って謎の人体実験を行うマッドサイエンティストのトヴァスキー,精神病院に入院していたケインの双子の兄ジャスパー,宝くじで億万長者になったトミー,国家安全保障局科学技術研究所所長フォーサイス,その部下で天才ハッカーのグライムズ他,これらの何の接点もない登場人物たちの話がバラバラに進むというよくありがちな構成ではあるものの,話がだんだん繋がってくる中盤まで上記の数学の話とあわせて読むのが本当にツライと思います。

上巻が半分くらい読めれば,下巻も買って大丈夫ではないかと思います。もし本屋で立ち読みするなり手に取ったりしてみるなどしてみてこりゃダメだ,受け付けないとか感じる人は,何だこの帯サギじゃねえか!とキレる事になるだろうから止めといた方がいいと思います。上巻が半分くらい読めれば,この下巻は本当に面白い「ノンストップ・サスペンス」ではないかと思います。起こりうる未来を予測する「能力」に目覚めたケインが,トヴァスキーやフォーサイス,グライムズ,そしてプロの追跡屋クロウが結成した追跡チームとどう戦うか?ドキドキワクワクしながら一気に読めます。上巻,下巻で出てきた「点」がどんどん頭の中で繋がって,「線」になるのがすごくイイです。全部読み終われば全ての伏線が消化され,疑問も全て解決。読後感はかなりスッキリ爽快です。

しかし,読み終わってから思ったけど,このタイトルは全然合ってないと思います。この邦題をつけた人が訳者なのかコピーライターなのか知りませんが,タイトルだけで敬遠する人が出てきそうなタイトルをつけたりするところはちょっとセンスをを疑ってしまいます。原題は”Improbable”。そのまんま「ありえない」とか「確率的にありえない」とか「インプロバブル」とかでよかったんじゃないだろうか,と私は思いました。

まあ,他にも何かケチをつけるのであれば,ケインの能力が無敵すぎて上巻ほどの緊張感がなくなっちゃったのが残念でした。もうちょっと何かケインが「起こる確率が低い」と予測した,それこそ「数学的にありえない」事が起こってピンチに立たされる場面があってもよかったんじゃ,と思うところもありました。

本では読むのがツライ人もいるだろうけど,これ映画化したら面白そうじゃないかな?と,私は当時思っていたのですが,もうアレから6年経ちますが,そんな話は全く聞きませんね。残念です。実写実現不可能な設定の漫画をドラマ化するヒマがあったら,こういうのを原作に何か練り上げて作ってみたらいいのに,と思わずにはいられません。


数学的にありえない 上

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