自分の人生が狂わせられ続けている,あの男を殺したいが殺せない…。人が殺人を犯す一線…「殺人の門」とは何なのか?そんなテーマの話です。
子供の頃からの友人に利用され続ける主人公。アイツを殺したい。でも殺せない…。そんな騙され続ける主人公の人生を書いた作品です。タイトルからして,殺人鬼が出てきて連続殺人が起きて,探偵が解決して~っていうバリバリの推理小説と思って買ったのですが実は全然違いました。
とにかく主人公がちょっと抜けていて,いつまでもその友人に騙され,転落し続けます。抜けているというのはちょっとというのは適切ではないですね。相当抜けてます。いい加減気付けよ,と言いたくなるくらいマヌケな時もあり,ひょっとしてそれはギャグでやっているのだろうか,とすら思う時もあります。しかも無意味にヘンなこだわりを持っていて,恨みや妄想ばかり加速していますが,実行力はゼロです。確かに騙し続ける友人もとんでもない奴ですし狡猾で頭も切れるのですが,それ以上に主人公がマヌケすぎて同情できません…。何度も殺意を抱きながらも実行できず,ただただもやもやしながら日々騙され転落していきます。
そんな読んでいてもただイライラもやもやする作品ですが,それでも引き込まれて読ませるのが作者の東野圭吾の力なのではないでしょうか。ただ,ラストをあんな風にしたのは何の意味があったのか,意図が分かりませんでした。結局イライラやもやもや感は最後まで解消されず,殺人の門というテーマが何だったのかも分からず,読後感の悪さが残ります。