海堂尊の東城大学病院シリーズの5作目です。今度は20年前,まだ高階病院長が講師,速水・島津・田口が医学生の頃の話です。ただし,主人公は彼らとは別の研修医です。
相変わらず人物を書くのがうまいと思いました。この作者の書いた人は何作目になってもスッと頭に入ってきて忘れません。今回初登場の人物もカチッとキャラクターが決められていて,今回の複雑な過去や人間関係からいろんな事が起きる世界に難なく入っていけます。この人の他の作品と同様,相変わらずクライマックスに入っていくまでが長いのですが,前4作までに比べれば少しずつ短く読みやすくなっている気がします。
やっぱり物語のキモは,タイトル通り,ブラックペアンとは何なのか,ブラックペアンは何のために用意されていたのか,でしょう。ラストも前作までとの矛盾もなく,問題も全部キレイに収まってとてもスッキリな読後感でした。これまでの4作の登場人物の若い頃はどうだったというのを読んでニヤニヤするのも良いと思います。