海堂尊 死因不明社会(2007) ★★

いつも魅力的なキャラクターたちを使ってさりげなく(?)医療の世界の暗部にスポットを当てていく海堂作品ですが,この「死因不明社会」はそのタイトル通り現代の死因究明制度の欠陥に対し,バリバリの作者の思想が書かれた本です。白鳥が登場していたりもするものの,エンターテイメント成分はほぼゼロのマジメ本です。作者の海堂尊は本当はこの「死因不明社会」をいつか書くために,小説で婉曲的に医療の問題点を取り上げていたらしいです。

今の日本の解剖制度は何が問題なのか,今の死因不明社会は何が原因で起きているのか,これから何が起こりうるのか,なぜAIが必要なのか,「チームバチスタの栄光」でさわりだけだった部分が詳しく熱く語られています。日本に住んで生きている限り,死ぬまで絶対病気にかからない人はいないんだから,この話が全く関係ないという人はいません。一度はこういう話を読んで知っておくべきではないでしょうか。

しかしながら,「チームバチスタ」のキャラクターを登場させたり,一番書きたかったこの本を読んでもらいやすくしようとしている努力はあるのでしょうが,普段本を読まない人がこれを読んだら確実に数ページで挫折します。全ての海堂作品を読んできた私でも,単純娯楽小説では全くないこの本を読み進めるのはかなりツラかったです。だいたい,その内容のほとんどはこれまでの小説で取り上げられていますしね。医療関係者やかなりこの問題にオネツの人でないと,また海堂作品を熱心に読んできた人は逆に最後まで読むのはツライかもしれない。マジメな医療本と考えてください。


死因不明社会 オリジナル・ブルーバックス版 Aiが拓く新しい医療【電子特典付き】

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