伊坂幸太郎 あるキング(2009) ★★★

野球をやるためだけに生まれてきた,野球の王になる事を運命付けられ生まれてきたある男の人生の話です。

弱小の地方プロ野球チーム,仙醍キングスの大ファンである夫婦の下に生まれた,山田王求(おうく)。その狂信的なまでの両親の教育により,生まれた時から野球の道に進む事が決められていた彼は,日々の生活を野球をするためだけに使い,呼吸をするように日頃から野球の訓練だけをしていました。そのためか小学生の頃から非凡な能力を誇り,打席に立てば十中八九ホームラン。打率・ホームラン率ほぼ10割(それ以外は敬遠)というパワプロもビックリの選手に成長します。

ここまで書くと,超人野球選手が上の世界を目指す,スポーツ青春もののような話に見えますが,全然違います。めちゃくちゃ暗い話です。山田王求のそのあまりにも常人と隔絶した能力は,周りの人間をシラケさせ,遠ざけ,孤立していってしまいます。その能力の裏で実は王求はこんな意外性が!こんな人間的な一面が!見たいな記述もほとんどなく,ただひたすら王求のあまりうらやましくならない孤独な人生が淡々と描かれています。リトルリーグや学生生活でも王求本人や周りの人間で幸せになった人は全くゼロであるかのように書かれており,ついに王求が念願のプロ野球選手になってからもそれは続きます。

いつもの軽い感じの伊坂作品と比べるとかなり異質で,作者も意図してそう書いたようです。つまらないとは思いませんが,読んでいてあまり楽しい話でもないので,そうたくさんの人に薦められる本ではないかなと私は思いました。


あるキング: 完全版 (新潮文庫)

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