海堂尊の田口・白鳥シリーズの第5作です。エーアイセンター立ち上げにあたり,田口と白鳥のコンビがAiを快く思わない警察官僚と戦う最中,東城大学病院でまたしても殺人事件が発生してしまいます。
伊藤淳史のドラマ版も毎週楽しみに観ていました。このドラマ版も3クール目で,大抵は3クール目ともなるとかなり酷い出来になってしまうものですが,原作の良さは壊さず,それでいてほどほどに原作を崩したいい感じのドラマでした。
東城大学病院不定愁訴外来の責任者・田口公平は,ある日高階病院長から今度設立されるエーアイセンターのセンター長に任命されます。新しいAiという技術によって司法の領域を侵される事を良しとしない警察や法医学者がエーアイセンターを潰すべく,エーアイセンター運営会議が開かれます。田口は白鳥や彦根新吾たちと協力しながら,警察官僚たちと運営会議で戦います。そんな中,またしても東城大学病院内で殺人事件が発生し,現場の状況から高階病院長が逮捕されてしまいます。田口と白鳥は高階病院長の冤罪の疑いを晴らせるのか?真犯人は一体誰なのか?そしてエーアイセンターのプロジェクトを守れるのか?という話です。
今作は作者が「原点回帰」を目指して書いたと言われており,「チーム・バチスタの栄光」と「イノセント・ゲリラの祝祭」を合わせたようなイメージと言われています。前作「イノセント・ゲリラの祝祭」は海堂作品の中でもダントツのつまらなさでしたが,「イノセント・ゲリラの祝祭」の会議部分に,「チーム・バチスタの栄光」のミステリ要素を合わせ,「いい時の海堂尊」の特徴である,非常にスピード感を持って夢中で読む事ができる作品となっています。「チーム・バチスタの栄光」のような医療過誤の事件ではなく,銃を使った100%の殺人事件ですが,Aiを使って真相にアプローチするという手法は同じです。
このシリーズのファンの人であろうがそうでなかろうが,読んでおいて間違いのない傑作です。