4人もの父親を持つ高校生を主人公とした,かなりむちゃくちゃな設定の家族の毎日やトラブル,事件などの日常を描いた作品です。
どこにでもいる普通の高校生である主人公・由紀夫は,4人もの父親がいるという普通でない家族構成の家に住んでいました。4人の父親はそれぞれタイプが全く異なり,野生的勘が鋭くギャンブル好きでちょいアウトローな「鷹」,元ホストで誰もが目を奪われるイケメンで女好きな「葵」,スポーツ万能で情熱と体力だけは誰にも負けない体育教師「勲」,常に冷静沈着で言葉の端々から知性あふれる大学教授「悟」。そして母・知代がその4人との4股交際を経て,由紀夫が生まれました。知代は誰か1人を選ぶという事もせず,全員が知代と由紀夫を愛しているという事で6人全員が大きな家で暮らしています。4人の父親の教育の成果か,由紀夫は多少クールではあるものの,スポーツ万能,成績優秀,ルックスもイケメンで,特に誰の血が濃く出ているというものはなく,誰の子供かは分かっていないし,皆調べないという家族のルールを守っていました。そんな変わってはいるけれども平穏な由紀夫たち家族がある事件に巻き込まれていく…という話です。
これはこの頃読んだ伊坂作品の中では久しぶりのヒットでしたね。こんなのいるわけねーだろ,というむちゃくちゃな設定ではあるものの,4人の非常に強い個性を持つ父親とのドタバタが非常におもしろい。この全くタイプの異なる4人の父親がいるって設定を聞いただけでも読みたくなりませんか?「ゴールデンスランバー」や「モダンタイムス」のような息の詰まる陰謀物のサスペンスが続いたかと思えば,「あるキング」や「SOSの猿」のような異色の作品が続いたりして,こういう伊坂作品はかなり久しぶりだったのですが,非常に楽しく読めました。ドラマや映画等で映像化してもおもしろい作品だと思います。