東野圭吾 嘘をもうひとつだけ(2003) ★★★★

東野圭吾の加賀恭一郎シリーズの第6作です。今回は5つの話が収録された,シリーズ初の短編集となっています。

バレエ団の事務員が転落死した事件「嘘をもうひとつだけ」,夫が帰宅すると妻の他殺体が発見され息子も行方不明となっていた事件「冷たい灼熱」,母子家庭の母親の愛人が殺害された事件「第二の希望」,交通事故で夫を亡くしたばかりの未亡人の愛人が行方不明となった事件「狂った計算」,加賀の友人が交通事故で入院してしまった事件「友の助言」の5つの短編が収録されている作品です。それぞれの話に繋がりはなく,全て1話完結です。

相変わらず非常に優秀で,確実に真相に迫ってくる練馬署の加賀恭一郎とそれをかわそうとする犯罪者たちとの攻防が描かれます。計画的で凶悪な筋金入りの犯罪者は登場せず,どちらかといえば不幸な偶然が重なって事件に巻き込まれた,事件を起こすに至ってしまった犯罪者ばかりなので,ラストは大抵悲壮感漂う終わり方になっており,あまり読後感の良い話はないですね。ただ,今までの作品とは違い1話完結の短編集なので,短い時間でも気軽に読めます。


嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)

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