アルファロメオ ステルヴィオを試乗してきた

X3を試乗に行った次の日に,アルファロメオのディーラーに行ってステルヴィオを見に行ってきました。これも自粛開始前の3月の話です。

ステルヴィオはジュリアから始まった新FRプラットフォーム「ジョルジョ」を使ったアルファロメオ初のSUVで,日本では2018年から発売しています。

エンジンは2Lのガソリンターボ,2.2Lのディーゼルターボ,2.9L V6ターボの3種類がありますが,フェラーリのエンジンから2気筒減らしただけでほとんど同じ設計の2.9L V6のクアドリフォリオは特別で庶民が買える価格ではないので,実質的には2Lのガソリンターボか2.2Lのディーゼルターボかの2択となります。

今回試乗した車は私も候補として考えていたディーゼルのスポーツパッケージというグレードで,普通のステルヴィオに対して19インチのアルミホイールを履かせ,ブレーキキャリパーを赤に塗ったりウインドウモールやルーフレールをブラックに塗ったりしてスポーティに仕上げているグレードです。

という事でインプレッションです。

■エクステリア(デザイン,質感)
全長4690mm,全幅1905mm,全高1680mmとあり,X3と比較すると全長が30mm短く,全幅が15mm,全高は5mm大きくなっています。実際見てみるとかなり存在感があります。ついに全幅が1900mmを超えるものも出てきました。

特にこのスポーツパッケージのデザインがイイんですよね。ディーラーではノーマルのと並べて見る事ができる訳ですが,そうすると,断然スポーツパッケージの方がカッコイイし欲しくなってしまう。というかむしろノーマルをワザとダサくしているのはないかと疑ってしまうほど。梅ホイールというか蹄鉄ホイールというかアルファの昔からあるようなデザインのホイールとか,他のメーカもどんどんマネすればいいのにと思うし,ブラックアウトされたモールとかルーフレールとかもメッキなんかと比べても手入れがラクそうだし。

このステルヴィオやジュリアが初めて披露された時には,微妙なデザインだなあと思って迷わず前々から憧れていた159を選んだ訳ですが,時が経って改めて見てみると,そこまで悪いデザインではないなと。159とどっちがイイかって言われたら159と答えますが。アルファにしてはあんまりクセがなく,比較的万人受けするデザインではないでしょうか。X3やその他大勢の比較的凡庸なデザインのSUVなんかと比べると,圧倒的にステルヴィオの方がイイ。まあ,イタ車がデザインで負けてたら終わりでしょうし,ここは当たり前ですけど。

■インテリア(シート,フロアカーペット,内張り,合わせ部等の質感)
試乗車は赤のレザーシートでした。これがネットの写真やカタログで見ると,かなりドギツイ赤に見えるのですが,実車を見ると比較的落ち着いたオトナの赤でした。これなら別に違和感なく乗れます。また,ブレラの時代の赤レザーは,とにかく赤,全部赤,ダッシュボードとかまで赤でフロントのガラスに赤が映り込んだりして見えづらくてやっぱりイタリア人って何も考えてないんだなっていう感じだったんですが,ちゃんとポイントポイントで黒とかも使うようになり,ダッシュボードも黒になって映り込みがなくなりました。

内装の質感はそれほど高くはなく大した事はないのですが,インテリアのデザインが良いおかげでほとんど気になりません。本杢やアルミがポイントポイントで使われてて,すごくイイように感じます。やっぱりイタ車のデザインはイイ。だけど私はやっぱり159のインテリアデザインの方が好きですけどね。ただ,材質は159から結構変わらない素材が多かったので,長く乗るとたぶんシートが破れたりスイッチがベタベタしてきたりするんだろうな…という想像は付きました。

■操作性(ノブ操作力,スイッチ配置,物入れ,シフトフィール,ラゲッジルーム)
まず一番気に入ったのはアルミ削り出しの大型のパドルシフトですね。固定式でステアリングを回してもパドルは回らないのですが,大型ですごく操作しやすい。アルミの削り出しで見た目もすごくイイ。このパドルシフトも,ステアリングにあるエンジンのスターとスイッチも,クアドリフォリオのエンジンも,フェラーリとの共通性があってすごくイイ仕掛けだなと思いました。アルファにしては比較的物入れはある!けど,やっぱり競合と比べるとありません。相変わらずグローブボックスは何も入れられないし。ラゲッジルームも競合と同程度の容量はあるのですが,幅があまりないように感じたのと,CX-5やX3にあった床下の収納はなく,トノカバーも仕舞う事ができません。スペースはあるのでただ考えていないだけですね。まあアルファにそんな期待をする事自体酷かもしれません。

メータはCX-5やX3と違って伝統の2眼のアナログメータで,中央に液晶のインフォメーションのスペースはあるタイプ。私はこっちの方が好きですね。ヘッドアップディスプレイがないのは残念ですが。

あと,ナビ。ステルヴィオもジュリアもナビはなく,社外ナビはデザインが台無しになるのを気にしなければ使えますが,基本的にはスマホをつないでAndroid AutoやApple Carplayで何とかしてくださいというスタンスです。百歩譲ってAndroid AutoやApple Carplayを許容しても,いちいち車に乗るたびに有線(USB)でスマホを繋がなければダメというのはめんどくさすぎてありえないです。しかも,営業の人のスマホを借りて試してみたけど,画質は悪いし,動作はもっさりだし,ブチブチ切れるし,使い物にならなさそう。これはステルヴィオもジュリアも登場当初から非難轟々だったようで,2020年モデルからようやくナビも載るようになるみたいです。コロナでいつ入ってくるか全く不明のようですが。

■乗降性
悪くありません。競合と同程度だと思います。競合もみんなそうですが,よじ登る感じもなくすんなり乗れるし,ドアの開口も十分です。
■居住性(室内広さ,シート座り心地,後席居住性)
車体の大きさほどは広さを感じませんが,十分な広さがあります。運転席はアルファだけあってスポーティでタイトなコックピット感があるように作られていて,もっとゆったり感がある方が好きと言う人もいるかもしれませんが,私はこっちの方が好きです。
■視認性(フロントの見切り)
CX-5やX3と同じく,視線が高い分フロントの見切りは良いです。運転席からボンネットがうねるデザインがすごくよく分かりますが,その分見切りは悪くなっているかもしれません。後方の視認性は,このデザインなのでよくはありませんが,こんなもんかなとも思います。CX-5やX3は全周囲のカメラがあるので安心なのですが,ステルヴィオはその設定が全くありません。唯一の頼りのバックカメラも解像度が悪くて見にくかったです。競合より後発で大きくてぶつけたらどうせ高いのにこれはダメですね。私はこのサイズの車は全周囲カメラ必須だと思います。
■動力性能・ドラビリ(パワー,ギヤ比)
このクラスのディーゼルのスペックは他社は大体横並びで,最大出力は180-190ps,最大トルクは400-450Nm,0-100km/h加速が大体8秒前後なのですが,ステルヴィオは最大出力210ps,最大トルク470Nm,0-100km/h加速が6.6秒と頭一つ抜けています。このカタログスペックを見て,ええ!?V6の159より速いじゃん!と,すごく期待して乗ったのですが…あれ?意外と普通…。ノーマルモードが良くないのかな?と思って,ダイナミックモードにしてみると,確かに元気になってさらに楽しくはなるし,CX-5やX3と比較するとかなりスポーティにキビキビ走れて燃費もよくてワーイとなるのは間違いないのですが…。私のアルファに対する期待値が高すぎたのか,期待していたほどではありませんでした。やっぱりそういう人はディーゼルよりもガソリンターボの方が楽しいのかもしれませんね。280馬力で0-100km/h加速5.7秒のガソリンターボも機会があれば乗ってみたいな。
■燃費
燃費は競合のディーゼルと同じくらいいいです。私はこのクラスのディーゼルの燃費は全く文句がなくいちいち比べていませんので,カタログの数字はたぶんCX-5やX3の方が良いかもしれませんが,有意な差ではないでしょう。ただ,アルファの方がいっぱい踏みたくなるような性格の車なので,それに従うと多少悪くなるかもしれませんね。
■操安性(ステアリング重さ,戻り)
これはいろんな記事でも話題になっていますが,ステアリングの設定がめちゃくちゃクイックで,ちょっと回しただけでものすごい曲がります。ステアリングのクセがすごい。私はちょっと乗ったら慣れました。
■乗心地(ゴツゴツ感,シート硬さ)
CX-5やX3のようなゆさゆさ揺らされるSUV感が全くなく,良くも悪くもまるで普通のセダンに乗っているようなフィーリングでした。これはビックリ。こういうのがイイ人はイイんじゃないでしょうか。私は別に可もなく不可もなく,という感じでしたが,もしかしたらこれは乗ってみたら意外と普通…と感じた理由の1つかもしれません。
■振動(アイドル時振動,低速時振動,ビビリ音,ステアリング振動,シフトレバー振動)
特に気になるようなものはありませんでした。まあアルファなので,所有していればそのうちいろんなところから音がしてきそうな気はしますが。
■騒音(遮音性,こもり音,風切り音,エンジン透過音)
競合と同じく,ディーゼルにしては車内は静かで,問題ありません。CX-5やX3と比べると静粛性は多少劣りますが,私からすればCX-5が静かすぎるだけで,信号待ちのアイドリング時等は十分静かだし,多少音が聞こえると言っても不快な音ではないし,多少エンジン音を聞かせる仕様の方が楽しくてイイと思います。
■制動(効き,踏み応え,ストローク,踏力)
特にクセもなく問題ないと思います。

という訳で,アルファらしく,長所と短所がはっきりした車でした。イイところは他社もなかなかマネしてくれないし,短所は何でこの程度の事ができないの?というのが多くてもどかしいです。アルファのデザインに,そこそこ広い居住性と,自動ブレーキやアダプティブクルーズコントロール等の現代的な装備も手に入れたアルファロメオらしからぬ快適なSUVですが,これで走りも完璧だったらよかったのですが…うーん。

私は自動ブレーキ等の安全装備を全く重視していないのでそのへんは加点になりません。しかし,パノラマサンルーフや全周囲カメラにナビといった私が付いて欲しい装備がことごとく付いていないのは大減点です。どうせアルファの自動安全装備なんて全く信用できないんだから,そのへんのユーザの利便性を高めるアイテムは付けて欲しかったです。2020年モデルからはナビも含めたインフォテインメント系が強化されるとの話ですが,それもコロナのおかげでいつ入ってくるか不明だし,入ってきたとしても新車なのでとても買える価格ではない,というかお金があったとしても値落ちが激しすぎてアルファは新車では買えないですね。

あと,車の出来不出来には関係ありませんが,今回行ったアルファロメオディーラーは最悪で,マツダやBMWと比べても圧倒的にダメでした。1週間以上前から試乗の予約をして行ったのに,何か他の来客対応とかで営業担当とは全く顔を合わせず,名刺ももらえませんでした。別に名刺が欲しい訳ではありませんが,特に混んでいた訳でもなく,2~3時間もいたのに一度も挨拶もないのはいくら何でも失礼すぎないか?女性の受付の方はマトモで,159に乗っていた話とかをしていたら自由に試乗車に乗ってどこに行ってもいいですよ,と言ってもらって比較的自由に試乗できたのはよかったけど,もし私がアルファの車を買うとしてもここからは買わないですね。Googleの口コミも悪かったので,たぶんみんなそんな感じなんでしょう。もう少し遠いディーラーは口コミは悪くなかったので,もし次アルファの試乗をしたくなったらそっちに行きます。

やっぱりアルファロメオは欲しい欲しい病になって狂った状態にならないと買えませんが,どうやら正気を保っていられそうです。


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