既に何度もドラマ化・映画化されている海堂尊のバチスタシリーズの第1作です。ちなみに映画は見ていないのですが，ドラマはずっと見ています。白鳥が仲村トオルじゃあカッコよすぎだろ，とか田口が伊藤淳史じゃあ若すぎだろ，とか最初は思っていたのですが，しばらくしたらまあこれはこれでいいか，と慣れました。
完璧な手技で成功を続ける栄光の医療チームで起こった，謎の連続術死事件の真相を追う話です。
とにかく登場人物のキャラクターがはっきりしており，どんどんこの世界に引き込まれてあっという間に読めます。しかも全員前半と後半で違う顔を見せてて，それもよかった。
前半は，主人公が地味～に調査を進める話です。しかも調査もあまり捗らない。ここまではちょっと読むスピードも鈍るかもしれません。これ以降の海堂作品全てそうなのですが，前半は非常に展開が遅くタルい事が非常に多いです。今作も第1作なのでそれが顕著に現れており，普段本を読んでいない方とかだと途中で挫折してしまうかもしれません。文庫化されて少し手直しされたらしいのですが，そちらは読んでいないので分かりませんが，ハードカバーのより改悪されている事はないでしょうし，未読の方はそちらを読まれた方がいいかもしれません。
しかし後半からは全く別の世界というか，ミステリーというよりエンタメ的な展開になります。私の好きな奥田英朗の伊良部も顔負けの，変人役人・白鳥が主人公・田口の助っ人として登場。白鳥に振り回されながらも，徐々に田口たちは真相に近付いていきます。一体この術死は単なる偶然なのか，医療過誤なのか，それとも殺人なのか…。
現役の医者が書いた新人賞って事で，これからの作品がとても楽しみです。と当時は書いていたのですが，作者は非常に速筆でガンガン本も出し，映画化・ドラマ化もされすっかり有名になってしまいました。この本が出たばかりの頃に，こりゃ面白そうだ！と手に取って帰ってすぐ読んだのがもはやかなり昔の事のようです。
よくインディーズ上がりのバンドがメジャーで売れて有名になると「オレ，あのバンドインディーズ時代から知ってるし」って言う人がいますが，私も声高々に「オレ，『このミス』大賞の時から海堂尊には目つけてたし！」と言いたいですね。
