「最悪」を読んで同じような系統の奥田本をもっと読んでみたいと思って探した作品です。「最悪」のように,刑事の九野薫,主婦の及川恭子,高校生の渡辺裕輔,ごく平凡な3人の主人公がひょんな事から歯車が狂い始め,破滅していく犯罪と狂気の話です。
他人には価値のわからない,本人にとってはかけがえのない宝を守りたい。自分のすべてをかけて守りたい。そんな思いも虚しく,必死になればなるほどそれが裏目に出てしまいます。組織のしがらみ,重なる不運…さまざまな「邪魔」が入り,どんどん追い詰められてしまいます。ただただ,悲しいお話ですが,読む手は止まりません。ただ鬱々とした話が続き,ひたすら救われません。凹むだけなのに,どんどん話に引き込まれてしまいます。この奥田小説の人物描写・心理描写には非常に来るものがあります。
読みやすさとしては「最悪」の方が読みやすいかもしれませんが,私は断然こっちの「邪魔」の方が好きでした。ぜひとも一度手に取って読んで欲しい一冊ですね。