奥田英朗の久しぶりの長編サスペンスです。昭和39年夏,10月に開催されるオリンピックに向け,世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京が舞台です。
東大の院生でイケメンの優男・島崎がオリンピック開催妨害を企むに至った経緯,国家の威信を賭けてそのテロリストを止めんとする警察との戦い,島崎を取り巻く人間や関わった人間の心理や行動を描いた話が交互に繰り返される構成となっています。長編で字もぎっしりですが非常にスピーディーな展開で一気に読めます。
かわいそうだとか哀れだとは思いましたが,正直主人公の島崎には感情移入できませんでした。格差社会を感じるのはいいのですが,なぜ東大生のイケメンがわざわざ底辺の世界を体験しにいったり,犯罪を犯したり,テロリストにまで落ちなければならないのか?そこまでのところに彼を走らせるものが私には理解できませんでした。東大行くような頭があってあまりにも恵まれた環境に育ったものですから…みたいな人間だとわかるのでしょうか?とはいえ,久々のシリアスな奥田作品で楽しく読めた作品でした。(もう読んだの4年前か…時間が経つのは早すぎますね…)