海堂尊 モルフェウスの領域(2010) ★★★

コールドスリープをテーマとした,海堂作品としては異色の医療SFです。「ナイチンゲールの沈黙」「医学のたまご」ともリンクしています。

ジーン・ワルツ」「マドンナ・ヴェルデ」「医学のたまご」などに登場した曾根崎信一郎が提唱した「凍眠八則」をベースとして作られた法律により,コールドスリープが認められた桜宮市を舞台とした話です。「ナイチンゲールの沈黙」で登場した佐々木アツシは,網膜芽腫を治療するために未来医学探求センター,通常コールドスリープセンターで最初で唯一の被験者「モルフェウス」として眠り続けていました。主人公・日比野涼子はコールドスリープセンターの資料整理係として,そして「モルフェウス」の維持・管理係として,仕事を委託されていました。涼子は完璧と言われる「凍眠八則」の欠陥を問題視しており,じきに目覚める事になるであろう「モルフェウス」の目覚めた後の人生を憂慮していました。前半はその問題点について,涼子と曾根崎教授のやり取りが描かれます。後半は,5年間の眠りから目覚めた佐々木アツシの話が描かれています。

海堂作品は非常に盛り上がってスピード感を持って一気に読める作品と,自分に酔ったような表現や前置き話が長くて読むのがただただツライ作品と,両極端あるのですが,正直,この「モルフェウスの領域」はあまり盛り上がるところがなく,非常に淡々と涼子と曾根崎のやり取りの話が進むので,海堂作品の中では比較的読み進めるのがツライ部類の本かもしれません。

この作品は海堂作品,いわゆる「桜宮サーガ」の登場人物が非常にたくさん出てきます。これまでの作品で一番いろんな人物が登場しているのではないかと思っています。あれ?この人あの人じゃない?とニヤニヤしながら読むのがこの本の正しい楽しみ方かもしれません。


モルフェウスの領域 (角川文庫)

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