ジャガー F-PACEを試乗してきた

追加調査で興味が出てきたジャガーのF-PACEを見に行ってきました。

ジャガーと言えば以前は昔からレーシングカーを作っているイメージと,4つ目でボンネットにリーピングキャットが乗った,穏やかなおじいさんの金持ちが乗るような高級車というイメージでしたが,2008年にフォードからタタに売られ,イアン・カラムの新しいデザインが取り入れられ,安価なエントリークラスのラインナップも増えました。今ではスポーティーでエレガントなイメージプラス少し若返ったイメージとなっています。

そんな新生ジャガーの初のSUVとして2016年から発売されたのがジャガー F-PACEです。ジャガーのSUVにはジャガーの創設理念である「Grace(優雅さ)」「Pace(速さ)」「Space(広さ)」の1つ,「PACE」が名前に付けられており,他にもE-PACEやI-PACEなどがあります。そこにジャガーのフラッグシップスポーツクーペであるFタイプと同じFの車格が与えられたのがF-PACEです。

すなわちスポーティーでエレガントなジャガーの車に,70年間オフローダーやSUVを作ってきたランドローバーのノウハウが組み合わされて開発されたSUVと言えるかもしれません。

エンジンはいろんなラインナップがありますが,大きく分けてディーゼルとガソリンがあります(年式等で廃止されたものや細かな違いはあります)。ディーゼルは4気筒の2Lターボ,ガソリンは4気筒の2Lターボが250馬力のものと300馬力でチューニング違いで2つ,実質最上位の3L V6スーパーチャージドエンジン,そして本当の最上位である5L V8スーパーチャージドエンジンなどがラインナップされています。

試乗車は売れ筋の2Lディーゼルターボで,Prestigeという中間グレードでした。他に,展示車や在庫車でPureという最廉価グレードから,R-Sport,Sまで,SVRという最上位グレード以外は見てきました。

という事でインプレッションです。

■エクステリア(デザイン,質感)
XE,XFといったイアン・カラムの新時代ジャガーデザインを踏襲したエクステリアで,イタフラ車のように尖ってはいないけれどもドイツ車のような華のない感じではなく,上品で見る人が見ればイイ車だねと言ってくれそうなデザインという感じでしょうか。私は嫌いではないですね。

SUVとしては全高はそこまで高くなく,ワイド&ローで,これまでの私の愛車の時も思った,止まっていても走り出しそうな躍動的なデザインです。ひたすらフラットを徹底しているランドローバーとは対照的なうねるような躍動的なデザインです。特に気に入ったのがサイドビューで,SUVなのにスポーツカーみたいなルックスなんですよ。

そういうデザインを取るために,1935mmというDセグメントとしてはとてつもなくでかい全幅になってしまったのかもしれませんが…。

■インテリア(シート,フロアカーペット,内張り,合わせ部等の質感)
インテリアもやはりイタフラ車のように尖ってはいないけれどもドイツ車のように質素な感じではなく,シンプルでモダンなデザインです。比較的オーソドックスなデザインではないかと思います。ただ,質感は残念ながら下位~中級グレードはハッキリ言って大した事ありません。特にPureという下位グレードでは国産車以下かもしれません。スポーティーなエクステリアを狙ったR-Sportという中級のグレードも,そんなムチャクチャ悪くはないけど大した事ありません。私の感覚的には中級グレードでステルヴィオと同等くらいの質感で,デザイン分でちょっと負けるくらいなイメージですかね。

ジャガーはお金を出していろいろオプションを足していくと,どんどんマトモな装備や見た目になるというポルシェ(ほどえげつなくはありません)方式なので,お金さえ出せる人ならどんどん質感が上がってはいきますが,中古車を見る感じではやはりそんなオプションをゴテゴテに付ける人はいなさそうです。

■操作性(ノブ操作力,スイッチ配置,物入れ,シフトフィール,ラゲッジルーム)
これは今まで見てきたCX-5X3ステルヴィオとは結構違うものがいろいろあり,一言で言えばクセがすごい。

まず,一番目につく点として,シフトレバーがなく,代わりにダイヤル式のシフトダイヤルが配置されています。これは最近のジャガーランドローバーの車全体として多い形式なんですが,IG ONでダイヤルがにょきっと生えてくるのがおもしろいカラクリだなと思いました。これは初めて見る人はオオッとネタにできる機構で,たぶん最初のうちは楽しいと思いますが,そのうち壊れないか心配だし,見やすさや分かりやすさはどうかと言えば全く見やすくも分かりやすくもないですね。ダイヤルでマニュアルシフトはできないので,パドルシフトが標準で付いている事や,普通の車だとドリンクホルダーにペットボトルのような背の高い飲み物を置いているとシフトレバーを操作するのに邪魔なのがなくなる事などが良い点と言えば良い点でしょうか。結構ムリヤリですが。

また,メータは12.3インチのフル液晶のデジタルメータで,今まで見てきた愛車候補と違って完全にフラットなデザインです。メルセデスやアウディみたいな感じですね。ナビの地図画面にしたりいろんな情報を表示できたりして便利ではありますが,私の好みだけで言えば好きではありません。昔ながらのアナログメータの方が好きですが,これも時代の流れなんでしょう。

そして,インパネ中央にはIncontrol touch proという10.2インチのタッチスクリーンが配置されています。これは十分にの大きくて見た目は良かったです。ただ,ネットの口コミでは,ブラックアウトする不具合があるとかナビの案内は頭が悪いとか非常に評判が悪いです。私も実際に使ってみた感じではさすがにフリーズやブラックアウトはありませんでしたが,もっさりしていて重いなという印象でした。もう4年も経っていて熟成されているだろうし,こういうシステムならアップデートで何とかなっていくかもしれませんが,私の感想としてはアルファよりはマシだけどBMWや国産ナビよりは大きく劣るという印象でした。

後は,普通の車のパワーウインドーのスイッチがあるところらへんに似たようなスイッチがあるのですが,実はそれはパワーウインドーのスイッチではなくパワーシートのメモリー機能のスイッチで,本物のパワーウインドーのスイッチはなぜかAピラー根元の窓枠部分にあり,率直に言ってかなり奇妙です。私の環境で言えば,パワーシートのメモリー機能なんてまず触らないのでそんな使いやすい特等席の位置になくてもいいし,パワーウインドーのスイッチなんてしょっちゅう使うんだから使いやすい位置に配置して欲しい。しかもこれに関しては私の意見は一般ピーポーの意見と全く同じはず。これは正直全く理解不能ですね。

物入れは比較的マトモで,ちゃんとグローブボックスも国産車並みのマトモなスペースがあるし,ラゲッジルームも508Lという十分なサイズもあります。

■乗降性
背が低そうな見た目ではありますが,乗降性は別に悪くありません。今回の愛車候補同等です。やはりよじ登る感じはありません。
■居住性(室内広さ,シート座り心地,後席居住性)
やはりボディサイズが大きいだけあって,室内は十分に広いです。特に後部座席はゆったりに感じました。運転席は意外とタイトで,スポーツカーみたいなドライビングポジションを取らされるコックピット感のある感じですが,私は好きなのでイイと思います。
■視認性(フロントの見切り)
視線が高い分フロントの見切りは良く,ボンネットのうねったデザインがハッキリ分かり,その分他の愛車候補よりは悪いかもしれません。後方視界はこのデザインだからか非常に悪く,全然見えませんが,こんなもんかなとも思います。ステルヴィオみたいにカメラの解像度が悪いという事もないし,全周囲カメラもあるから問題ないか!?
■動力性能・ドラビリ(パワー,ギヤ比)
今回の愛車候補の中ではF-PACEのディーゼルエンジンのカタログスペックは出力は控えめでトルクに振っているようなスペックとなってはいるものの,サイズと重量が重い分加速が犠牲になっているんだろうなという予想をしていましたが,意外と試乗では問題なく走っていました。ディーゼルだけれども比較的元気に回るように感じたし,早くてスポーティに感じました。他の愛車候補と同様,街中では全く問題ありません。8速のATも特にクセもなく問題ありませんでした。車としてはCX-5やX3よりもスポーティな味付けで,ステルヴィオと同様な感じで私としては好印象でした。

後は試乗はできませんでしたが,音が気に入っていたV6スーパーチャージドエンジンの車もちょっと見せてもらって吹かさせてもらいましたが,ちゃんとYoutube通りのイイ音をさせてました。すばらしい。こんなエンジン音を毎日聞けたら最高だろうなと思いました。費用的にかなりの覚悟が必要ですが…。

正気で合理的に考えれば間違いなく費用面で非常に経済的なディーゼルを選ぶべきなんでしょうけどね。実際の売れ筋もディーゼルのようです。

■燃費
ディーゼルのカタログ燃費はJC08で15.8km/Lで,実燃費としては私調べで10km/hちょいみたいで,CX-5やX3よりはほんの少し劣りますが,十分だと思います。
■操安性(ステアリング重さ,戻り)
ステアリングの重さは特にクセもなく普通で,FRのような回頭性で高速では楽しそうです。また,車体のサイズは大きいのですが,意外と取り回しが良く,最小回転半径は5.6mと,X3の5.7mやステルヴィオの6.0mよりも良いです。これはグッドですね。まあただ,1935mmという大きさは運転していても十分感じますけどね。
■乗心地(ゴツゴツ感,シート硬さ)
足回りはそんなにガチガチという訳でもなく,適度な硬さで乗心地は悪くありませんでした。
■振動(アイドル時振動,低速時振動,ビビリ音,ステアリング振動,シフトレバー振動)
特に気になる点はありませんでした。問題なし。
■騒音(遮音性,こもり音,風切り音,エンジン透過音)
遮音は十分にされていて,全く問題ありません。CX-5と比べると静粛性では劣るというか多少エンジン音を聞かせる仕様となっていますが,私としてはこのくらいの方がイイですね。
■制動(効き,踏み応え,ストローク,踏力)
ブレーキに関しては特にクセもなく問題ありません。

という訳で,X3のような優等生的な感じではなく,どちらかと言えばステルヴィオと同じようなイイところはイイ,ダメなところはダメという感じの車でした。まあでもこういう欠点のある車の方が長く愛せるような気もするので,欠点が受け入れられないようなポイントでなければいいのではないかと思います。

たとえばいまだにアダプティブクルーズコントロールが高額オプションだったり,自動ブレーキも標準で付いていなかったり,安全装備系は残念ながら時代遅れですが,私としては気にしないポイントなので問題なし。

ナビ系がしょぼいのは残念ですが,許容範囲。

各種便利装備等は何でも標準で付いてくるX3よりはハッキリ劣る。一応X3と同等にする事はかなりのオプション金額を投入すれば不可能ではありませんが,使い勝手や性能は基本的に劣る。ただ,パノラマサンルーフや全周囲カメラ等,私の押さえて欲しいポイントは押さえているし,スポーティな味付けは私の好みです。

という訳で,F-PACEはいろいろとダメなところも多いですが,総合的には結構好印象でした。

ただ,ジャガーの信頼性は私のイメージとしては国産車やドイツ車にはハッキリ劣る,アルファよりは多少マシかな,というレベルなので,そういう面では心配な点もありますが…。


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